国民の2人に1人が悩みを抱えている腰痛※1)
非特異的腰痛と呼ばれる、医療機関の検査でも明確な原因がわからない腰痛が全体のおよそ70%~80%を占めるなかで、ストレッチや筋力トレーニングなどのセルフケアで腰痛を改善しようと頑張っている方も多いことでしょう。
しかし、セルフケアはやり方次第では薬にも毒にもなる諸刃の剣です。なかでもストレッチは手軽で安全に実践できるセルフケアとして広く知られていますが「絶対にやってはいけない腰痛ストレッチ」があります。
本ページでは、腰痛でお悩みの方に、絶対にやってはいけない腰痛ストレッチとは一体どのようなものなのかをわかりやすくお伝えさせていただきます。
※1)平成22年国民生活基礎調査の概況|厚生労働省 (mhlw.go.jp)
絶対にやってはいけない腰痛ストレッチとは?
絶対にやってはいけない腰痛ストレッチを簡単に説明すると「腰に痛みを感じる動きを伴うストレッチ」です。
たとえば、腰を反ったときに痛みを強く感じる場合は、腰を反るストレッチはやってはいけません。同じように腰を曲げたときに痛みを強く感じる場合は、腰を曲げるストレッチはやらないようにすべきです。
では、具体的に説明をしていきます。
腰を反ると痛いときにやってはいけない腰痛ストレッチ
腰を反ると痛みを感じる場合、以下の腰痛が考えられます。
- 腰椎すべり症
- 腰椎分離すべり症
- 急性腰椎症(ぎっくり腰)
腰を反るストレッチは写真でご紹介しているようなストレッチの他にも、立位の状態や普段無意識に近い状態で腰を反るストレッチを行っている方も多いため注意が必要です。
また、普段腰痛の自覚症状がない方でも、過度な腰を反るストレッチは椎間関節(腰の骨と腰の骨の間)に負担を掛けてしまうためご注意ください。
腰を曲げると痛いときにやってはいけない腰痛ストレッチ
腰を曲げると痛みを感じる場合、以下の腰痛が考えられます。
- 腰椎椎間板ヘルニア
- 仙腸関節捻挫
- 急性腰椎症(ぎっくり腰)
腰を曲げるストレッチは、上記疾患に該当する場合でも「痛いけど気持ち良い」という感覚になる場合が多いため広く実践されているストレッチですが、実際には椎間関節や脊柱起立筋(背骨を支える筋肉)に負担を掛けてしまうリスクを伴うため注意が必要です。
腰を捻ると痛いときにやってはいけない腰痛ストレッチ
腰を捻ると痛い場合は、あらゆる疾患が考えられます。
腰を捻るという動作は、ここまでお伝えした腰を反る・腰を曲げるよりも椎間関節に大きな負担を掛ける動作であり、腰痛時にはできる限りやらないほうがよいストレッチのひとつです。
また、腰を過度に捻ると骨がポキッと鳴り一時的な気持ち良さを感じることがありますが、関節や筋肉には負担を掛けているため腰痛のセルフケアとしては適していません。
絶対にやってはいけない腰痛ストレッチでも一時的に楽になる場合がある
少し厄介ですが、ご紹介した絶対にやってはいけない腰痛ストレッチでも、いざ実践すると一時的に腰痛が緩和することがあります。
一時的でも腰痛が緩和すると「腰痛に対して良いストレッチができている」と思い込んでしまう方も多いかもしれませんが残念ながら誤解です。
これは痛みがある箇所に対して刺激を与えることで、一時的に感覚が鈍くなり痛みやだるさなどの不調が緩和したように感じる、もみほぐしと似たような現象が起こることが原因だと考えられます。
残念ながら腰痛が改善されているわけではないためご注意ください。
【あなたが整形外科やマッサージに行っても腰痛が再発する3つの理由】
腰痛におすすめストレッチ3選
絶対にやってはいけない腰痛ストレッチをお伝えさせていただきました。では一体、腰痛のときにはどんなストレッチを実践すれば良いのでしょうか?
以下では、腰痛のときにぜひ実践していただきたいストレッチを3つご紹介しています。
大切なことは「腰痛だからといって腰のストレッチをする必要はない」ということです。
腸腰筋のストレッチ
- 片方の足を前に出し、前足に体重をかけます。
- 後ろ足太ももの前部分が伸びていればOKです。
- 10秒キープ⇒足の入れ替え⇒3セット行います。
腸腰筋とは、腰椎から大腿骨(太ももの骨)を橋渡しのように付着している筋肉です。
歩くとき、立ち上がるときなど日常生活の何気ない動きにも腸腰筋が関わっていることが多く、腸腰筋が硬くなると腰痛をはじめとした多くの不調を発症するリスクを伴うため日頃からのセルフケアが大切な筋肉のひとつです。
腸腰筋のストレッチは、写真のように腰に負担を掛けることなく実践できるため、安全で効果的に腰痛ケアが可能なストレッチとしてご紹介させていただきます。
中殿筋のストレッチ
- 長座の姿勢で座ります。
- 片方の脚をもう片方の脚にクロスさせ膝を抱え込みます。
- お尻に伸びを感じればOKです。
- 10秒キープ⇒足の入れ替え⇒3セット行います。
中殿筋とは、お尻の筋肉のひとつで、お尻の中央から骨盤の上部に付着し、大腿骨(ももの骨)につながっています。中殿筋は骨盤の動きに大きく関わっており、中殿筋が硬くなると歩行や姿勢に影響を及ぼし、次第に腰への負担が強くなることで腰痛発症のリスクが高まるため、写真のようなストレッチを定期的に行い、セルフケアを実践することが大切です。
ハムストリングスのストレッチ
- 椅子に座った状態で片方の脚を前に伸ばします。
- つま先を立てた状態で少し頭を前に倒します。
- ハムストリングス(太ももの裏)に伸びを感じればOKです。
- 10秒キープ⇒足の入れ替え⇒3セット行います。
正式名称は大腿二頭筋と呼ばれるハムストリングスは太ももの裏に位置しています。ハムストリングスが硬くなると、歩行や姿勢維持機能が著しく低下して腰痛発症のリスクを伴うため定期的なセルフケアが必要な筋肉のひとつです。
ハムストリングスのストレッチ方法は、イラストの方法以外にもたくさんありますが、なるべく腰に負担を掛けない方法として椅子に座った状態でのストレッチをおすすめさせていただきます。
腰痛ストレッチを実践するときの注意点
腰痛ストレッチを実践するときには以下のことにご注意ください。
伸ばし過ぎは禁物
どのストレッチを行うにしても伸ばし過ぎは絶対にやめましょう。
ストレッチは、筋肉を伸ばすほど効果が高いわけではありません。
むしろ、筋肉の伸ばし過ぎは腰痛悪化のリスクにも繋がります。
ストレッチの強度は中強度。主観では「やや物足りない」と感じるくらいがもっとも効果的です。
ストレッチで腰痛が根本改善するわけではない
腰痛予防や対処法としてストレッチが効果的であることはたしかです。
だたし、ストレッチさえ実践しておけば腰痛が根本的に改善するわけではありません。
腰痛を根本的に改善させるためには、腰痛の「原因」を把握することが大切です。
腰痛の原因は、人によってさまざまですが、ほとんどの場合は自身の日常生活に潜んでいます。
日頃の姿勢や体の使い方、生活サイクルなどあらゆる日常生活の見直しがもっとも確実に腰痛を根本改善させる方法だと言えます。
まとめ
絶対にやってはいけない腰痛ストレッチについてお伝えさせていただきました。
ストレッチはやり方次第では腰痛を悪化させてしまう「毒」にもなりえることを十分にご理解いただいたうえで安全で効果的なセルフケアを実践するよう心がけましょう